今野敏著『機捜235』を読みました。
市立図書館で貸出ランキング1位になっていて、予約をしてやっと借りることができたんです。
警察ものだけれど、謎解きみたいなのは無し。
主人公高丸が新たにパートナーとなった縞長を、徐々に信頼し、本当の相棒になっていく心理描写がとてもよかったと思います。
さくっと2時間くらいで読み終えて、読んだ後はすっきりさっぱりする作品でした。
1話ずつも15分くらいで読めるし、内容も割とあっさりしてるので、軽くちょこっと読みたい人にもおすすめの本ですよ。
『機捜235』あらすじ
機動捜査隊、略して機捜を舞台にした九つの短編連作の警察小説。
34歳になったばかりの高丸と同い年の相棒、梅原は、第二機動捜査隊に所属していた。
機捜は、担当エリア内を機捜車に乗って巡回している。
彼らのコールサインは「機捜235」。
第2機動捜査隊、第三方面を主に巡回する5番目の車という意味である。
事件発生の一報が無線で入れば、直ちに現場に急行し、初動捜査を行う。
機動力を生かして、誰よりも早く到着し、現場の保存、目撃者の聞き込みをしたら、速やかに捜査一課に引き継ぐ。
立場をわきまえ、その後の取り調べや逮捕後の手続きは関知しない。
それが機捜の仕事であり、誇りだ。
そして機捜隊員は場数を踏み、経験を積んだ優秀なものが捜査一課に引っ張られる。
機捜は、刑事の登竜門のような位置づけだと高丸は思っていた。
ある当番の日、相棒の梅原が、職質をかけた運転手に殴られ、病院送りとなってしまう。
打てば響く梅原とのコンビは一時解消し、代わりにやってきたのは、定年間近の縞長。
「この年齢で機捜の仕事が務まるのだろうか」
高丸の心の内でため息をついていた。
機捜の経験が長い高丸、警察官としてはベテランの縞長。
お互いに気を使って、なかなか打ち解けられないまま渋谷の街を巡回していた。
すると、縞長は意外な能力を発揮する。
「ちょっと車を停めてくれませんか」
縞長に言われて、職質をかけた男は、指名手配犯だった。
整形をし、人相が全く違う犯人を、どうして縞長は見分けることができたのか。
「機捜235」は次々実績をあげて、機捜を見下していた捜査員たちを見返す。
高丸と縞長の二人は、お互いに能力を認めあい、本当の相棒になっていく。
主な登場人物
高丸(たかまる)
34歳。第二機捜隊所属。
機捜の経験は長く、実績をあげ捜査一課捜査員になりたいと思っている。
縞長(しまなが)通称シマさん
57歳。元見当たり捜査員。
白髪頭で、見た目はできない刑事っぽいけど、実はすごい能力の持ち主。
梅原(うめはら)
高丸の元相棒。
職質をかけた運転手に殴られ大腿骨を骨折。
3か月の入院後は、新人(井川)の教育係。
熊井
渋谷署の刑事。機捜は気楽な仕事だとバカにしている節があるが…
石黒
本部捜査一課の捜査員。
シマさんの因縁の相手?機捜をかなり見下している。
『機捜235』を読んだ感想(ネタバレ注意)
1話完結の勧善懲悪
水戸黄門かなってくらい、1話完結の完全懲悪。
1話の中で、事件が発生して「機捜235」が大活躍して解決するからスッキリします。
犯人はきちんと逮捕されるし、バカにしてきた捜査一課の連中を見返すこともできて、すっきりさっぱり。
主人公の高丸くんが、なかなかいいやつで、突拍子もない失敗したり、変なこと言って周りを困らせたりということもありません。
失敗しないから安心して読んでいられる感じ。
文章もあまり難しくないし、 1話もだいたい15分くらいで読めたので、軽く読むにはぴったりです。
相棒の能力すごい
新しく相棒となったシマさんこと「縞長」の能力がかなりすごい。
「この紋所が目に入らぬかー」ジャーン!
って感じでしっかり活躍してくれるのです。
シマさん、すごし!
シマさんみたいな能力の持ち主をいっぱい育てたら、被疑者逃亡で未解決事件とかすぐに解決しそうです。
シマさんもすごいけど、実は高丸くんもすごいんじゃないかな。
人の心の動きを敏感に察知して、気遣いのできる男、高丸。
シマさんにも、捜査一課の捜査員にも、地域課の係員にも気を使っている。
そしてそれが犯人の心の動きも敏感に察知できる。
高丸、すごし!
高丸くんの刑事としての成長が気になる
高丸くんの成長がこの本のメインのテーマだったのかなぁ。
序盤では、機捜の役割、機捜の立場を気にして、捜査に立ち入ったりしませんでした。
初動捜査までが機捜の仕事。
捜査員に引き継いだら、次の事件に備えるのが当然と高丸くんは思っていたんです。
でも、シマさんに影響されたのか、徐々に捜査のその後が気になり始めます。
容疑者を探してみたり、捜査本部に行って捜査員から状況を聞き出してみたり。
「気になったら最後まで調べる」ということが、機捜には求められていないけれど、警察官としては必要で大事なことだと知る高丸。
自分は刑事じゃない、機捜の仕事、役割だと一歩引いたような考えだったのが、最後まで真相を突き止めたいという刑事としての矜持を持ち始めたのかなと思いました。
伏線とかない
いっぱい伏線ちりばめて、最後に盛り上がって回収というタイプの小説ではありません。
伏線かなと思われたものは、1話の中で回収されてしまいました。
でもそれが、サクッと読めていいところなのかなぁという気もします。
1話ずつドラマにでもできそうな感じだし、いつかドラマ化されるのかも。
しいて伏線ぽいものと言えば、シマさんが機捜に配属された理由だろうか。
高丸の成長のためと言えないこともないけど、もっと壮大な意図があってもいいかなぁ。
続編があったらその辺をちょっと期待したいです。
『機捜235』読了まとめ
警察小説だけど、機捜をテーマにしたちょっと珍しい作品かな。
初動捜査や事件の端緒をつかむまでの話なので、謎解き要素や、取り調べや捜査の内容は描かれていません。
見当たり捜査出身という縞長の能力と、人の心の動きに敏感な高丸の能力。
2人の能力が合わさって、お互いに信頼しあって相棒になっていく。
今後の2人の活躍がすごく楽しみな作品でした。
続編を期待します。